本の概要
この本は、ブラジルの人気作家パウロ・コエーリョ氏が1988年に出版した童話風の物語です。
ブラジル国内はもちろんのこと、世界中でベストセラーとなっています。
この本のテーマは「夢を生きる」です。
羊飼いの少年サンチャゴが夢を追いかけて旅に出て、様々な登場人物との運命的な出会いを通じ、最終的に彼なりの「宝物」を見つけるという物語です。
これだけだと普通の物語のように感じるかもしれませんが、それぞれの登場人物がサンチャゴに語る言葉が深く、哲学的な内容に富んでいて、とても考えさせられます。
日々の忙しさで自分の夢を忘れてしまった我々に、夢を追いかけることの大切さを改めて教えてくれる本です。
少しスピリチュアルな部分があるので、その点はやや人を選ぶかもしれません。
ただ、それを抜きにしても、読んで得るものや心に響く言葉が多く、私が心からオススメできる一冊です。
この本の中で印象深かった点
自分が本当に叶えたい夢に正直に生きよう
物語の序盤に「王様」という登場人物が出てきます。
この王様が、人間が持つ自分のやりたいことや叶えたい夢について、こんなことを語っています。
あの男も、子供の時は、旅をしたがっていた。
しかし、まずパン屋の店を買い、お金をためることにした。
そして年をとったら、アフリカに行って一ヵ月過ごすつもりだ。
人は、自分の夢見ていることをいつでも実行できることに、あの男は気がついていないのだよ。
結局、人は自分の運命より、他人が羊飼いやパン屋をどう思うかという方が、もっと大切になってしまうのだ。
人は誰しも叶えたい夢があり、今すぐにでもやろうと思えば挑戦できるはずなのに、なぜかすぐに行動を起こそうとはしない場合が多い。
何かと理由をつけて、やりたいことの「準備」にずっと時間を費やしていたり、世間体や他人の目を気にして本当にやりたいことに踏み出せずにいる。
そうして日々を過ごしているうちに、「今のままでもいいや」と惰性に流され、いつしか自分の夢を忘れてしまう。
…ということを意味している言葉なのだと私は受け取りました。
では、自分の夢を忘れることなく実現させるにはどうすれば良いのか?
それについては本の中に大きなヒントがあります。
主人公のサンチャゴがとあるキャンディ売りの人を見かけた時、キャンディ売りの様子を見てこんなことを感じています。
このキャンディ売りは、将来旅に出たり、店の主人の娘と結婚するために、キャンディを作っているのではない。
彼はそうしたいからやっているのだ。
つまり、本当にやりたいことの準備やまどろっこしい回り道に時間を費やすのではない。
自分が本当にやりたいことや叶えたい夢に正直に、まっすぐに挑戦するべきだということです。
例えば「起業したいけど、まずは十分お金を貯めてからにしよう」と言っている人は、なんだかんだで結局いつまでも起業しないことが多い。
そうではなく、お金はあまりなくてもその分工夫して、現状できる範囲でまず起業してしまおう!という姿勢が望ましいということ。
自分が本当に叶えたい夢に正直に生きることの大切さを教えてくれるとともに、背中を押してもらえた感じがしました。
「今」に心を集中する
中盤で本の中に登場するらくだ使いが、サンチャゴにこんなことを話す場面があります。
私は食べている時は、食べることしか考えません。
もし私が行進していたら、行進することだけに集中します。
もし私が戦わなければならなかったら、その日に死んでもそれはかまいません。
なぜなら、私は過去にも未来にも生きていないからです。
私は今だけにしか興味を持っていません。
もし常に今に心を集中していれば、幸せになれます。
砂漠には人生があり、空には星があり、部族の男たちは人間だから戦う、ということがわかるでしょう。
人生は私たちにとってパーティであり、お祭りでもあります。
なぜなら、人生は、いま私たちが生きているこの瞬間だからです。
また、別の登場人物にこんな内容のセリフがあります。
もしおまえが、現在によく注意していれば、おまえは現在をもっと良くすることができる。
そして、おまえが現在を良くしさえすれば、将来起こってくることも良くなるのだ。
未来のことなど忘れてしまいなさい。
そして、神様は神の子を愛していると信頼して、毎日を神様の教えにそって生きるがよい。
毎日の中に永遠があるのだ。
この両者の言葉に共通するのは、過去でも未来でもなく「今現在」に集中することで、人生は良いものになるということです。
今にしっかり目を向けるべきだという考えは、この本に限らず様々な本で私は見かけきましたので、世の中の共通した真理と言えるのかもしれません。
過去の失敗をいつまでも悔いていても、過去に起きてしまった出来事を変えることはできない。
未来のことをずっと不安に思っても、未来がどうなるかは誰にも分からない。
どちらもいたずらに気分が落ち込むだけです。
そうではなく、今、目の前のことに心を集中することで建設的な考えや行動につなげることができるはずだ、と改めて感じました。
この考え方はぜひ皆さんも取り入れてみると良いと思います。
夢を追求することを恐れないで
物語の終盤、サンチャゴの「心」がサンチャゴ自身にこう語りかけます。
人は、自分の一番大切な夢を追求するのがこわいのです。
自分はそれに値しないと感じているか、自分はそれを達成できないと感じているからです。
永遠に去ってゆく恋人や、楽しいはずだったのにそうならなかった時のことや、見つかったかもしれないのに永久に砂に埋もれた宝物のことなどを考えただけで、人の心はこわくてたまりません。
なぜなら、こうしたことが本当に起こると、非常に傷つくからです。
また、物語の重要人物である錬金術師がサンチャゴにこう言っています。
傷つくのを恐れることは、実際に傷つくよりもつらいものだと、おまえの心に言ってやるがよい。
夢を追及している時は、心は決して傷つかない。
それは、追及の一瞬一瞬が神との出会いであり、永遠との出会いだからだ。
もし、自分の人生を生きてさえいれば、知る必要のあるすべてのことを、人は知っている。
しかし夢の実現を不可能にするものが、たった一つだけある。
それは失敗するのではないかという恐れだ。
確かに私自身、やりたいことがあってもそれが失敗して傷ついた時のことを想像してしまい、一歩を踏み出せないことがこれまで何度もありました。
それだけに、サンチャゴの心や錬金術師の言葉は非常に耳が痛いです。
一方、本の中で主人公のサンチャゴは、夢を追い求めることへの不安や恐れを感じながらも、それを乗り越えて自分だけの宝物を手に入れています。
そんなカッコいい主人公の姿を見て、「失敗して笑われたり傷つくことを恐れて夢を諦めてしまうのはもったいない!」と私も改めて感じました。
一冊を通じて、恐れずに勇気を出して自分の夢を追いかけてほしいという、著者からのエールがふんだんに盛り込まれています。
その一つ一つのエールで私は大きく心動かされました。
ぜひ皆さんにも著者からのエールを感じてみてほしいです。
まとめ
今回の記事では、【アルケミスト 夢を旅した少年】の本を紹介しました。
大人になるにつれていつの間にか忘れてしまった自分の夢を思い出させてくれる名著です。
日々忙しく生きている我々が、もう一度しっかり自分自身と向き合うために読んでみるといいと思います。
本当にオススメなので、ぜひ多くの人に読んでみてほしいです!