今回は「不安」をテーマにした記事の4回目です。
このシリーズもひとまずこれで完結となります。
不安に立ち向かうために、あらゆる策を講じても「感じるしかない不安」が最後に残る。
この「感じるしかない不安」と共にうまく生きていくためには、結果よりも過程を重視するのが大切だということについて解説します。
本シリーズのラストにふさわしい内容だと思いますので、ぜひ最後までお付き合いいただければ幸いです。
不安の強さを逆に活かして行動する
前回、不安の感じ方には個人差があるということを述べましたが、不安が強い人には別のパターンがあります。
それは「理想が高い人」「完璧主義な人」です。
このタイプの人は
- ○○でありたい
- ○○でなければならない
という強迫観念や固定観念のような思いを人一倍強く持っています。
それゆえ、逆に上手くいかなかった時を想定した
- 失敗したらどうしよう
- 間違えたらどうしよう
という不安の感情も非常に強いです。
この場合、強い不安の感情をどうにかしようとして強引に押さえつけたり、感じないように鈍感になろうとしても上手くいきません。
不安を「消し去る」というのは限りなく難しいためです。
では、どうすれば良いのか?
自分の中の「○○でありたい」という感情に正面から向き合い、その実現可能性を高めるための建設的な行動にひたむきな努力を注ぐのが良いと私は思っています。
具体例を挙げると、仕事の重要なプレゼンが上手くいくかどうか不安な場合、何とかして心を落ち着けようと精神論的に考えても上手くいかない。
そうではなく、何度も入念に発表練習をしたり、思いつく限りの想定質問への回答を準備しておくといった、具体的な行動を起こすべきだということです。
このように、不安の強さを逆に活かして積極的な行動につなげることで、自分が対処可能な範囲で不安を最大限軽減できるようになります。
「感じるしかない不安」は静かに受け入れる
ただ、どんなに建設的な努力を重ねたとしても、失敗したり間違えたりする可能性を完全になくすことはできません。
どう頑張っても不安がゼロになることはないのです。
先程のプレゼンの例であれば、どれだけ発表練習を重ねても
- 話す内容を本番でド忘れしてしまう
- 突然頭が真っ白になってしまう
かもしれません。さらには
- プレゼンをする相手の機嫌がもともと悪かった
- 相手がそもそもプレゼンをまともに聞く気がなかった
といった、こちら側の努力ではどうしようもない理由で失敗する可能性もあります。
このような、最大限の対処をしても最後まで消えることのない不安は「感じるしかない不安」であると言えます。
最後まで残る「感じるしかない不安」は、誰にもどうすることもできません。
それが自然の摂理であり、人間という生き物のさだめなのです。
その摂理に反して「感じるしかない不安」すら消し去ろうと抵抗するのは、太陽の下に立ってできる自分の影を消そうとするような無謀な行動です。
心や精神をすり減らして消耗し、むしろ不安を増大させることにつながります。
軽減可能な不安は極力減らせるように精一杯の努力を行い、その上で残った「感じるしかない不安」はあるがまま静かに受け入れる。
これが、不安とうまく共生するための合理的かつ有効な方法です。
結果を重視しすぎると不安が強くなる
とはいえ、最後まで残った「感じるしかない不安」があまりにも強すぎると、心が耐えきれず受け入れることが難しくなります。
では「感じるしかない不安」が強くなるのはどのような状況なのか?
それは、行動の過程よりも結果を重要視した場合です。
自分が努力してきた過程を重視せず、「結果が全てだ」と成果にばかり執着してしまうと、自分の心を追い込むことになります。
また、結果は自分の力では制御できない要素に左右される面も大きいため、結果にこだわりすぎれば「感じるしかない不安」が過剰に強まります。
プレゼンの例の場合であれば、
プレゼンに成功して相手を納得させられれば自分の勝ちで、失敗して却下されたなら自分はどうしようもないダメ人間なんだ
というようにプレゼンの結果次第で自分の価値が全て決まるかのような考え方をしてしまうと、失敗への恐れがあまりにも強くなりすぎて「感じるしかない不安」を心が受け止めきれなくなるでしょう。
過程を大切にすれば不安は弱まる
確かに人生において結果や成果は重要です。
でもそこにばかり執着するのではなく、プレゼンの例であれば
- 丁寧で分かりやすいプレゼン資料を作成する
- 入念に発表や説明の練習をしておく
- 思いつく限りの想定質問への回答を準備しておく
といった出来る限りの目前の努力に全力を注ぐ。
そして結果がどうなったとしても、自分が全力で頑張ったその「過程」を認めてあげて、褒めてあげるんだと心に決めておく。
そうすれば失敗に対する恐れが弱まり、感じるしかない不安を心が受け止められる程度まで弱めることができるはずです。
結果や成果は自分の力だけで完全にコントロールすることはできません。
でも、結果に至る過程において自分がどれだけ頑張るか、努力するかといった「目の前の行動」は、完全に制御下に置くことが可能です。
今現在の自分ができる努力に集中して一生懸命取り組んでいれば、その間は結果に対する不安は頭から消え去ってくれます。
さらに、良い成果が生まれる可能性を高めることにも繋がります。
このように、
制御困難な「結果」に目を向けるのではなく、
制御可能な「過程」に目を向け、今自分ができることに全力を尽くす
ことが、不安に立ち向かうための勇気をくれるのです!
最後に
以上、これまで4回の記事に渡って、不安に立ち向かうための様々な方法を紹介してきました。
人間という生き物は、多かれ少なかれ一生不安と隣り合わせで、不安と共生していく運命にあると私は思っています。
こんなことを書くと悲観的だと思われる人もいるかもしれませんが、決してそういうことではありません。
- 人間として心身共により強くありたい
- もっと充実した人生を送りたい
- 自分の力で人や社会に貢献したい
という前向きな気持ちや向上心が強ければ強いほど、その裏返しである不安という感情も強くなるのです。
向上心の強い人が大きな不安に押し潰され、心身共に傷を負ってしまう姿なんて、もうこれ以上見たくはありません。
だからこそ不安に打ち勝ち、あなた自身の
挑戦したいという気持ちに勇気を授けるために、
誰かの力になりたいという想いの背中を押すために、
前へ前へと進むその歩みを止めないために、
より多くの人達に、自分に合った不安のコントロール法や不安に立ち向かう方法を身に付けて、生き生きとした人生を送ってほしい!
それが私からみなさんへのメッセージです。
最後まで本シリーズをご覧いただき本当にありがとうございました!