前回から引き続き、今回の記事も「不安」がテーマです。
ただし、これまでの2回とは少し内容が異なります。
- 不安の感じ方には個人差が非常に大きい
- HSPのような不安を感じやすい人は、苦手なことから「逃げる」という選択肢を有効に使ってほしい
という内容について私の考えを述べていきます。
「自分は不安に弱い」と引け目や劣等感を感じている人を心から応援したい!
少しでも、不安に弱いことに悩んでいる人の力になりたい!
そんな想いを胸に今回の記事を書きました。
不安の感じ方には大きな個人差がある
前々回と前回の不安に関する記事では「道は開ける」の本を参考にして、不安に立ち向かうための様々な方法を紹介しました。
これらの方法は、どんなタイプの人でも一定の効果があると思っています。
つまり、絶えず不安に悩まされている現代人一般に役立つということです。
しかしその一方で、そもそも不安に対する
- 感じ方
- 受け止め方
- 敏感さ or 鈍感さ
- 打たれ強さ
- 回復力(レジリエンス)
といった感覚は人それぞれ大きく異なると私は考えています。
不安という概念そのものを考える上で、そして不安への対策を導き出す上で、不安の感じ方の個人差をよく理解しておくことは必須と言えるでしょう。
実際に不安に対する強さが人によって違うということを、皆さんも経験上なんとなく実感しているかと思います。
例えば、
・普通なら強いプレッシャーのかかる場面でも平然としている人
・「何とかなるでしょ」といつも楽観的な考え方を持っている人
・新しいチャレンジや大きな仕事が不安で消極的な人
・いつもビクビクしていて自信がなく、不安そうにしている人
・仕事の重要な局面で怖くなって逃げ出してしまう「逃げ癖」のある人
などです。
不安の感じ方が違う理由①偏桃体の働きの差
では、なぜ不安の感じ方は人によって異なるのか?
一人一人の個性だと言ってしまえばそれまでですが、そこには明確で理論的な理由があります。
1つ目は、「偏桃体」の働きの強さが人によって違うからです。
偏桃体とは脳の内側に存在する部位のことであり、感覚的な刺激に対して無意識的・反射的に対応する役割を持っています。
偏桃体の働きが弱い人は、不安を引き起こすような出来事や刺激に対して「鈍感」であり、自然にある程度スルーすることができるので不安に強いタイプであると言えます。
逆に偏桃体の働きが強い人は、不安の原因となる出来事や刺激に対して「敏感」であり、些細なことで動揺したりストレスを感じたりして不安に苛まれやすいので、不安に弱いタイプとなります。
HSPの人は偏桃体の働きが強い場合が多く、不安に敏感で弱い傾向があるようです。
ただ、もちろん誰もが強い・弱いの両極端にいるという訳ではなく、その中間のどこかに位置する場合がほとんどです。
偏桃体の働きの強さは人によって千差万別なので当然ではあります。
不安の感じ方が違う理由②セロトニンに関する遺伝子の働きの差
2つ目は、神経伝達物質の一種である「セロトニン」に関する遺伝子の働き方が人によって違うからです。
人間の脳は、セロトニンという精神の安定に寄与する神経伝達物質を出します。
一度放出されたセロトニンを回収する「セロトニントランスポーター」という遺伝子があるのですが、この遺伝子の機能には個人差があります。
セロトニントランスポーター遺伝子の働きが弱いタイプの人は放出されたセロトニンの回収量が減り、慢性的なセロトニン不足に陥ります。
HSPの人はまさにこのタイプに当てはまります。
その結果、不安を感じやすい不安定な精神状態になりやすいのです。
セロトニントランスポーター遺伝子は人によって、さらには人種によっても大きな差があることが分かっています。
アジア人、特に日本人はセロトニントランスポーター遺伝子の働きが弱い一方、アメリカ人やアフリカ人は逆に強いとのことです。
不安に弱いことで劣等感を感じる必要はない
ここまでで述べた不安の個人差を引き起こす2つの原因からは、非常に重要な結論を導くことができます。それは、
『不安に対する強さは先天的な要素が大きい』
ということです。
- 偏桃体の働きの強さ
- セロトニンの回収に関わる遺伝子の強さ
これらの性質は一人一人が生まれ持ったものであり、自分の力で根本的に変えるようなことはかなり難しいと考えられます。
自分は他の人と比べて不安を感じやすく、不安に弱い人間だと劣等感に悩まされながら生きてきた人もいるかと思います。
そんな弱い性格を変えようとして、心を鍛えたり無理を押して苦手な物事に挑戦したりと努力してきたかもしれません。
「ビビり」や「引っ込み思案」とバカにされた経験があるかもしれません。
でも、それは決してあなたの我慢が足りない訳でも、努力が十分でない訳でも、人間として劣っている訳でもありません。
ただ単に、もともと不安を感じやすい性質の人間としてこの世に生まれ落ちたというだけなのです。
不安に弱いことに劣等感を感じる必要は全くありません!
むしろ、不安を感じやすいことはデメリットだけではなく、不用意なトラブルや重大なミスを事前に回避できるといった、リスク管理の面における大きなメリットもあるのです。
不安を引き起こすような苦手なことからは逃げたっていい
生まれつき不安に弱いHSPのようなタイプの人が、前々回と前回で紹介した方法だけで不安に立ち向かっていくことには、どうしても限界があると思っています。
他の対策も併用する必要があるでしょう。
では、不安に弱い人はどうすれば良いのか?
私は、不安を引き起こすような苦手なことからできるだけ「逃げる」ことを強く推奨します。
「不安を感じた時にどう対処するのかを考える」
のが不安に立ち向かう方法であるとすれば、
「そもそも不安を極力感じないで済むようにする」
ことが不安から逃げるという発想です。
例えば、車を運転するのが苦手で怖くて不安を感じるのであれば、不安を感じずに運転する方法を探して試行錯誤するのではなく、そもそも車を運転しないでも生活できる方法を考えるということです。
自転車を徹底的に活用したり、ある程度都会で駅が近い場所に住めば全く不可能な話ではありません。
工夫次第で何とでもなります。
他には、初対面の人と話すことが非常に苦手で強い不安を感じるのなら、不特定多数の人と接する行事やイベントにできる限り参加しないようにする、といった対策も挙げられます。
日常生活の中で、人生に必須ではない苦手なことで不安を招いているのであれば、それを思い切って削ってしまう、やめてしまうことは不安に敏感で弱い人にとって非常に強力な特効薬だと思います。
この考え方は、不安に強い鈍感なタイプの人から馬鹿にされるかもしれません。
そんな意見は一切無視して構わないです。
不安に弱い人には弱い人なりの、安心して生きるための戦略があります。
不安に押し潰されそうで心が壊れそうになっている人は、恥だとか思わずにぜひ「不安を引き起こす苦手なことから逃げる」ことを試してみてほしいと思います。
きっと今までよりも心穏やかに日々を過ごせるようになるはずです!
まとめ
以上、今回の記事では不安の個人差と、苦手なことから「逃げる」という選択肢の大切さについて解説しました。
今回私が書いた内容を通じて、自分は不安に弱いと感じている人を少しでも勇気づけることができたなら嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。